『自分で本を出版する・ワードDTP編・DIY産直出版のススメ』『自分で本を出版する・製本術編』の無料公開につて
2001年から紙の本で出版されていた本です。著作権は、「あくり出版」が持っています。ちょっと変わった非常識出版を実践していた「あくり出版」です。
現在は販売しておりません。内容が古くなったのでここで無料公開いたします。何かのお役に立てれば幸いです。
※ご紹介している「あくり出版」の書籍や製本キットなどについては、現在販売はしておりません。
それでは、「かんたん」「安い」「お手軽」な、でも見栄えは市販本に負けない手作り製本の最高峰、『クルミ製本角布固め法』をご紹介いたします。「目引き糸綴じ法」よりも材料が少なく強力な製本が出来ます。「目引き糸綴じ法」が発展したものです。
クルミ製本角布固め法に必要な道具・材料
●背固めの厚紙————-背を硬く固定するものです。隠れる所ですから、お菓子の箱等の再利用で結構です。
●角布固め用の布———-白い木綿の布、古布で充分です。
●補強紙———————本の背の長さ弱で幅が厚さの4倍くらいの紙、コピー用紙で結構です。
●見返し用紙—————-一冊に付き2枚づつ、色つきのコピー用紙が見栄え良く手に入りやすいと思います。
●表紙————————画用紙程度の厚紙がいいでしょう。
●木工用ボンド
●筆—————————水彩画用の筆で結構です。
●カッター
●定規————————厚紙をカットするのに使います。鉄の定規が扱いやすいと思います。
●あくり製本キット本体——-無い場合は、板などで代用。
あくり製本キットの基本手順
完成図
最 終的にこのような、並製本が出来上がります。表紙だけ、別に上製本のものを作成して本体と接合すれば、立派な上製本も製作可能です。
1. 本体の作成
A4用紙に帳合印刷したものをカッターで裁断。A5の大きさになります。
A4、B5のときはこの工程は要りません。そのまま製本加工に入ります。
プリンターで印刷したものをA5またはB6に裁断します。一番上の紙を正確に二つに折ってその折り目に鉄の定規を宛てます。
定規がずれないように力強くおさえ、カッターで裁断します。A4やB5の大きさの場合は、そのままで製本を始めます。
事務用の裁断機も販売されていますが、書籍にするほどの枚数をいっぺんに裁断することは出来ません。カッターによる裁断が現実的です。
2. 製本キットにセットする
背になる部分を下にしてはさむ。
板などで両脇をそろえる。
はさんだ用紙を崩さないように締め上げる。
背を上にして本の天と地をそろえます。裁断の仕方がまずくて背が多少不ぞろいでも構いません。
小口になる下の部分を綺麗にそろえてください。背の部分は、糊付けして隠すことが出来ますので多少の不ぞろいはなんとかなります。
小さな板などで本の上下になる小口をそろえてください。写真のものは、いらなくなったかまぼこ板です。身近なものを何でも利用するのがDIY出版です。
そろえた本の本体を崩さないように締め上げてください。この本の背を上にして自立させる「あくり製本キット」があると作業が非常に楽ですが、無い場合は、板などで締め上げてください。
「あくり製本キット」の金属製のボルトは上下左右に多少動くようにあそびをとってあります。こうすることによって締め上げ板の移動がスムーズになります。いろいろと見えないところに工夫が施されています。この解説の中でご紹介していきます。
3. のり付け
背にボンドをたっぷりとぬる。
木工ボンドを背の天から地までまんべんなく塗ってください。多少多めにぬったほうがいいでしょう。
ばらばらの本文用紙を背の部分で接着するところです。背に染み込むようにしっかり塗りましょう。
市販されている書籍は、書籍用の強力な接着力のあるホットメルトなど専門の溶剤を使用しています。
DIY産直出版では、専門の材料は一切使いません。近所の文房具店やホームセンターなどで入手可能なものだけにこだわっています。
そうでなければ、DIY出版とはいいません。ここでは、木工ボンドです。でんぷん糊でも構いません。紙が接着できれば良いのです。ここで木工ボンドを使用しているのは、乾きが早いのとホットメルトに成分が似ているからです。
4. 厚紙はり
背を強くするために厚紙をはる。
本の背と同じ幅と長さの厚紙を貼り付けます。この厚紙を背の補強として貼ることにより書籍としての強度が増します。
これは、無くても製本できますが、この厚紙で背を硬くしておかないと完成後に本の開きが良くなりすぎて本体からページ落ちする危険があります。
製本用の強力ボンドを使用していませんのでこのように補強の厚紙を入れます。
もちろん内部資料用に冊子を作る程度であれば、省略しても構いません。また、はがし良くしたメモ帳などの作成には必要のない工程です。
5. 角布固め・・・のり付け
角 布の準備。
2センチ四方の小布に折り目をつける。
製本キットを立てます。
角にボンドをぬる。
全体を立てて、角布を張るために角に木工ボンドを塗ります。背の角から4方向に3~5ミリ程度づつ塗ってください。
2センチ四方に切った小布を天と地の背の角に貼ります。ボンドをぬったところに布を張ります。
布に少し折り目をつけて、その折り目を本の小口側にして角を束ねるように貼ります。
角布をはる。
上 になった部分が、本の天地になります。完成後、見える部分になりますので張りをつけてきれいにします。
角布を折り込むためにボンドをぬります。
完成したときに天と地の側だけが見えるところにきますので、その辺だけは、ピッと張った状態で貼り付けます。
布は本に使っている用紙の色に合わせてお好きなものを使ってください。
汚れていなければ、古布で十分です。本の内容や用紙の色に合わせて布の色もかえてみると良いかと思います。また、使用していない思い入れの布を使って記念の著書を製本するのも良いかと思います。
角をきれいにまとめる。
上の面をしっかりと伸ばし、きっちりと角をまとめるようにはりつけます。
この「角布固め」の工程が本の強度を強める最大の役目をしています。この角を布で固定することで一枚づつの紙が束になり離れにくくなります。
この角布を紙で代用してもかまいませんが、完成後、読書中に強くページを開くと角布の紙が破ける恐れがあります。内部資料用程度の目的でしたら紙で充分です。
また、内部資料として、一度きりの会議用などの冊子作りでしたら、この角布じたいを無しにしてもいいかも知れません。背にボンドをつけて乾燥させるだけでも簡単な冊子は作成可能です。
一般の本では、製本用の特別な強力ボンドを使ったり、糸で縫い合わせたりしていますが、われわれは、DIY出版社ですから、お金をかけない手軽な製本を楽しんでやってしまいます。
この状態で少し乾燥させます。布が取れない程度でいいでしょう。急ぐときは、ドライヤーで乾燥させてく下さい。
身近なボンドで市販本の強度を出すためにいろいろと研究した結果が、この角をくるむことでした。日本の和装本には多用されていたようですが、それを現代の製本方法と合体させたようなものです。
7. 補強紙はり
再度背にボンドをぬる。
補強紙をはる。
補強紙を張った状態。
角 布固めが終わったところで、製本キットを横に戻し、背の部分に木工ボンドを再度塗ります。今度は、補強の紙をはるだけですので薄く塗ればけっこうです。角布の上も塗ります。
本の高さより5ミリほど短い長さで幅は3~5センチほどの紙を張り付けます。
紙の材質は何でもかまいません。厚紙と角布が取れないように補強する役目で張ります。コピー用紙のプリントし損なったものでもリサイクルで張っておくと良いでしょう。
繰り返しますが、ここは、DIY出版社です。お金をかけません。資源の無駄もしません。
8. 見返しの作成
A4を二つ折りにして見返しの作成。
A5判の場合はA4の用紙を、B6判の場合はB5の用紙を二つ折りにして見返し用紙とします。
A4、B5版の場合は、大きいですがA3、B4の用紙を半分に折って使用します。
本文の用紙とは色違いにしたほうが見栄えがいいでしょう。表と裏に2枚必要です。見返し用紙は色違いにしたり、和紙を使用したりと装飾的な要素が大きいですが、本体を表紙につなげる重要な役目があります。
9. 見返しを本体に貼り付ける
補強紙を外側にあける。
ボンドを5ミリほどぬる。
見返し用紙を挟み込むようにはる。
7番の工程で補強紙をはりました。ある程度乾いた状態になってから製本キットからはずします。
写真のように補強紙を外側に広げて背の付け根、ノド口に木工ボンドを5ミリ程度の幅で塗ります。
準備しておいた見返し用紙を、折り目を内側にして本の天地がずれないように正確にはります。
外側の小口は最後に断ち切りますので数ミリはみ出してもかまいません。
はさんだ見返しの上にボンドを再度つける。
補 強紙を戻し押さえてはりつける。
再度、背の側にボンドを塗って、今度は補強紙を見返し用紙に張り付けます。
このような状態になります。
これで書籍としての本体が出来上がりました。まだ半乾きの状態ですが本の形になってきました。
10. 表紙の作成
冊子状になった本体に厚手の紙で表紙をつけます。一枚の厚手の紙で全体をくるむようにしますので「クルミ製本」と言います。
本の大きさに合わせてカットします。
本 の厚みに合わせて整形します。
A5判の場合は、B4の画用紙などの厚紙に気に入った表紙をプリントしてください。
MSワードを使った表紙の作成方法は、『自分で本を出版する・ワードDTP編』で詳しく解説しています。
それをA5判の書籍の高さ210ミリ幅でカットします。それぞれの大きさに合わせて工夫してください。本の厚み分で折り曲げ本体をくるむようにします。
11. 表紙と合体
本 体のサイズにあわせて加工した表紙を貼り付けます。
背と天地を合わせます。
ボンドは、背の角から補強紙が隠れるくらいまで塗ります。紙どうしが接着すれば良いのであまり多量に塗るといけません。ボンドの量が多すぎると乾いたときに本の開きが悪くなります。表裏とも同じように塗ります。
小口は最後に切り落としますから、天と地をあわせます。背の角がきれいになるように慎重に貼り合わせます。
このように本体を厚手の紙でくるむようにしますので、「クルミ製本」と言います。市販されている並製本では、ほとんどがこの製法を取っています。
市販本では、接着にホットメルトなど製本用の強力なボンドを使用しています。
「DIY産直出版」では、身近な材料だけでいかに市販本に負けないものを作るかを追求しています。
木工ボンドと「角布固め法」の組み合わせで製本の強度としてはホットメルトに負けない製本が出来ます。
12. 製本キットで締め上げ、乾燥
乾燥を兼ねた締め上げ。
背を下に締め付ける。
背を汚さないように寝かせて乾燥。
製本キット底部の内側の角を微妙に削ってあるので本の角がつぶれません。
今度は、背を下にして締め上げます。背の角をつぶさないように、あくり製本キットには、底部の角に30度ほどのカットを入れてあります。このカット部があるおかげで背の角がつぶれません。
また、ボンドのついた部分を強力に締め上げることによって、湿度で波打ったところを直します。
この締め上げるという行為が、製本には重要で、紙全体を均一にして乾燥状態にするため、単に紙を束にして接着したものとは違った風格が出ます。
単なる冊子を作るのではなく、書籍としての製本をする場合は、必ず全体に圧力をかける工程が必要です。
そこを身近な板などにはさんで、電話帳を何冊も載せたり漬物石をのせたりして圧力をかけてもかまいませんが、角を少し出してはさむ行為が、多量に製本するときは、わりと手間のかかる作業です。
あくり製本キットは、角をつぶさないように圧力をかけると言う工程を簡単に場所を取らずにできないかと思い考え出されました。
一見簡単そうな締め上げ作業ですが、ちょっとしたコツのいる工程です。背の角の出し方や全体の圧力のかけ方など、あくり製本キットがあれば、どなたでも間単に製本の締め上げが可能です。
あくり製本キットがない方は、板などにはさんで背の角の部分だけ数ミリはみ出させて締め上げてください。
この状態で完全に乾くまで乾燥させます。2~3時間以上乾燥させて下さい。
13. 小口のカット
乾燥後小口のカット。
三方そろった並製本の完成です。
乾燥が終わったら、製本キットから取り出し、小口をそろえます。
鉄の定規などをあてて、本文用紙と正確にそろえます。天と地そしてこの小口がきれいにそろっていると書籍としての見栄えがグッとよくなりますので慎重に作業してください。
市販されている並製本では、本の大きさが仕上げの寸法より大きく作られ、この工程の時に、小口の三方を大きな裁断機で表紙もろとも一気に裁断します。ですから表紙と本体がきれいにそろったものになっています。
ここ、DIY出版社では、コピー用紙などのきれいにそろっている面は、そのまま生かして表紙のみを本体にあわせてカットすることにより、市販本に負けない体裁の本を作ります。ですから専門の裁断機も必要ありません。DIY出版社はお金をかけません。
14. カバーをかける
光沢紙に印刷したカバー。
本体に合わせて折り目をつける。
カバーをかける。
こんな感じの本が出来ます。
書籍の本体ができたところでカバーをかけます。光沢紙などに印刷したものをカバーとして使用します。ツルツルした光沢紙のカバーをつけるだけで、立派な並製本の完成です。
本文の編集とあわせて、表紙やカバーの印刷方法などは、『自分で本を出版する・ワードDTP編』に詳しく解説しています。
これでとうとうオリジナル本の完成です。
市販のインクジェット用の光沢紙を使用するときは、A5、B6判の大きさの時は、A3やB4の用紙をちょうど良い大きさにカットして使用します。
A4、B5判の場合は、少し大きい判になりますので、表紙の厚紙や外カバーは、多少工夫がいります。
次にその一例をご紹介します。
大きい判の表紙やカバーのかけ方
本がA5、B6の大きさであれば、それをくるむ表紙とカバーは本の大きさの表裏とプラス本の厚み分がないといけません。
A5、B6の場合は、B4あるいはA3の大きさの用紙を、短いほうの長さを本の高さにあわせてカットすれば必要な用紙が出来上がります。それにお好きなデザインを施してプリントすれば、立派なのもが出来上がります。
このへんの詳細は『自分で本を出版する・ワードでDTP編』をご参照ください。
B5の大きさの場合は、厚さが2センチくらいまででしたら、なんとかA3用紙を加工して表紙とカバーが作成出来ます。A3までの大きさでしたら、文房具店やホームセンター、コンピュータショップなどで購入できます。本書で解説している「DIY産直出版」の製本術においては、特別な用紙などは一切使用しない、近所で入手可能であるということにこだわっています。
そこで、問題になるのがA4の書籍を製本するときです。A4の2倍プラス本の厚み分の大きさの用紙は、A3以上の大きさが必要です。
A3より大きい用紙は探せば専門店にありますが、近所で入手可能という条件からはずれてしまいます。
そこで、私の考えました「A4書籍表紙カバー作成の裏ワザ」をご紹介しましょう。
1. 表紙の用意
A4光沢紙の厚手を購入してきます。厚さは、0.2ミリ以上あれば結構です。これは、コンピュータショップでしたら置いていると思います。
写真のように表と裏そして背の部分を別々に作成します。
背にあたるところは、A4用紙に5~6センチ幅で背のプリントをして必要なところでカットして作成します。これを書籍の本体に上手にはり合わせます。
2. ボンドを塗ります
ま ず、表面を背から2センチほどボンドを塗ります。
3. 表紙に光沢紙をはる
表紙を本体に合わせて貼ります。同じように裏面も張り合わせます。
背には何もはっていない表と裏のみに光沢紙のツルツルしたカバー兼表紙がはってあります。
このように背の無い表と裏だけが光沢紙の状態になります。
4. 背をはり合わせる
用意しておいた背の部分をはり合わせます。
ボ ンドを薄くまんべんなく塗ってください。文字が背の部分に来るように、正確に位置合わせをして下さい。
し っかりと押さえて、中に空気が入らないようにして下さい。
背の部分をいかにきれいにはるかが、ここの重要な工程です。少し難しいところです。
コツは、背になる紙にボンドをまんべんなく薄めにぬることです。シワを出さないように丁寧に押さえて表紙と一直線にそろうように張り合わせます。
5. 締め上げ
さらに背の角を硬くするために製本キットで締め上げます。背の部分を下にして挟みます。
締め上げ、乾燥。
6. 完成
乾燥が終わった所で製本キットから取り出します。全面が光沢紙でくるまれたA4書籍の完成です。
大判の写真集やお子様のプリント類をまとめたり資料集など大き目の冊子を作るときにも役に立ちます。
A4までの大きさが製本できるようになるとアイデア次第でいろいろと楽しみがふえてきます。
『自分で本を出版する・ワードDTP編・DIY産直出版のススメ』『自分で本を出版する・製本術編』とは
2001年から紙の本で出版されていた本です。著作権は、「あくり出版」が持っています。ちょっと変わった非常識出版を実践していた「あくり出版」です。
ワードを使った書籍用のDTPの操作を解説した本です。古いワードのテクニカル本です。
『自分で本を出版する・製本術編』はワードDTPで作成し、インクジェットプリンターで印刷したものをビジネス書っぽく製本する方法を解説したものです。
当時4000円くらいで販売していたものです。3000冊ほど売れたと思います。ISBNもあり、国立国会図書館にも入っています。今は、販売していません。もしかして、古本でどなたかが販売しているかもしれません。
内容的に今では、使われていないワードのバージョンですので、ここで無料公開します。縦書き書籍用のデータをそのまま掲載しますので、改行も少なく、ネットでは読みにくいかもしれませんが、書籍の雰囲気をそのままということで、ご勘弁をお願い致します。
懐かしいワードの使い方をご覧ください。
新しいワードのバージョンで、ご参考になれば幸いです。
『自分で本を出版する・製本術編』についても、製本術自体は、古くなっても色あせることはありませんが、現在のネットワーク時代に紙の本というよりも、電子書籍やWEBにSNSですから、古い情報です。こちらも無料公開いたします。
なにかのお役に立てれば幸いです。
※ご紹介している「あくり出版」の書籍や製本キットなどについては、現在販売はしておりません。
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